~Sさん(30代、バルセロナ在住日本人)の場合~

バルセロナ在住のSさんがヌリア渓谷(Vall de Núria)のことを知ったのは、グラシア通りで開かれていた古本市がきっかけだという。

「その日は、サン・ジョルディのお祭りで、街のいたるところに古本や新刊本を売る屋台が出ていました。無造作に積まれた本の中に、とてもきれいな山の写真が表紙の薄い本を見つけて。それが、の登山ルート付きの地図だったんです。」

家に帰って調べてみると、バルセロナの中心地からヌリア渓谷までは、電車で簡単にアクセスできることが分かった。

「私はトレッキングが趣味で、日本に住んでいた頃は頻繁に山へ遊びに行っていたのですが、スペインに引越して以来、山からはすっかり足が遠のいていました。ヌリア渓谷は、公共交通機関で行けるところがうれしいですね。バルセロナターミナル駅であるバルセロナ・サンツ駅から、R3路線でRibes de Freser駅まで大体2時間。そこから観光登山列車の“Cremallera”に乗り換えれば、その終点がヌリア渓谷です。日帰り旅行もできるほどの手軽さですよね!」

Sさんが目指したのは、ヌリア渓谷周辺では最高峰にあたる、プッジマル (Puigmal)山(標高2,910m)。ヌリア渓谷は、プッジマル山の登山口の一つでもある。

「3,000m級の山というと敷居が高そうですが、ヌリア渓谷はすでに標高1,960mの位置にあり、ここからプッジマル山への登山道はとても良く整備されていました。ヌリア渓谷の宿泊施設でお弁当も作ってもらえますので、トレッキングファンにはお勧めのコースです。ピストンでプッジマル山とヌリア渓谷を往復するのもありですし、近くの山々を縦走し、稜線歩きをすることも可能です。私自身は、速乾性の衣服やトレッキングシューズを着用し、登山用雨具を携帯、いわゆる標準的な夏山の装備で登りましたが、犬の散歩がてら普段着で登っている地元の中学生を見かけた位なので、初心者でも問題ないコースです。」

トレッキングコースとしても魅力的なヌリア渓谷だが、山に登らずとも、ヌリア駅および宿泊施設周辺を散策するだけでも十分楽しめるそうだ。アクティビティも充実していて、アーチェリー、ミニゴルフ、農業体験、カヌーなどを体験できる。小さい子ども用には、トランポリンや遊具などが設置された遊び場もある。

「ヌリア渓谷の中心は、湖畔沿いに建つ大きな建物です。宿泊施設やレストラン、カフェ、ヌリア聖母教会がひとつの建物に入っていて、とても便利です。そういえば、そこのカフェで飲んだカバが驚くべき美味しさでした。登山の後だったからかもしれませんが。私が訪れたのは夏でしたので、登山者や、アクティビティを楽しむ家族連れ、近くのキャンプ場でテントを張るお客さんも多く来ていました。湖畔には、仔ロバを飼っている小屋があったり、高山植物も見かけましたし、散歩するだけでもまったく飽きない場所ですね。小さいお子さん連れの方々も楽しんでおられるようでした。冬はスキー客で賑わうそうです。」

カタルーニャ州の自然が手軽に楽しめるヌリア渓谷。バルセロナを訪れた際は、ぜひ足を伸ばしてみたい場所であることは間違いない。

 

【アクセス】

鉄道:バルセロナ・サンツ(Barcelona Sants)駅より、Rodalies BarcelonaのR3線のRibes de Freser駅にて下車。Ribes de Freser駅で観光登山列車Cremalleraに乗り換え、終点がヌリア(Núria)駅。